創作小話『急にニセ科学批判を始めたムラビト的論者』

 ムラビト的な論者であるAさんが、既存のニセ科学批判者たちの活動を見て憧れました。
 「すごい人たちだなあ」
 「自分も、あの人たちみたいに活躍したいなあ」
 「そうだ、私も今日からニセ科学批判を始めたらいいんだ、うんそうしよう」

 そう言ってAさんはニセ科学批判のブログを始めましたが、
 尊敬される存在になれるどころか、ネガティブコメントを一身に受ける状況となりました。
 【読者たちのコメント】
 ある科学素人:「根拠の不明な噂話をちょっと鵜呑みに信じて善意で拡散しただけなのに、私の人格を否定するなんてひどい」

 あるニセ科学批判批判者:「ニセ科学批判の仕方が、ダメすぎだ」
 「この私個人を満足させるような、もっと上手いニセ科学批判の仕方を実行しろ」
 「それができたときは、この私から『大儀である』と言ってやる」

 あるニセ科学推進者:「証明責任の転嫁という言葉を、知っているか?」
「というわけで、私の理論が正しくないという根拠を、批判側であるAさんが提示しろ」
 (Aさんが根拠を提示すると)
 「そんな科学的な事実はどうでもいい、とにかく私のインチキ商売に横から口を出すな」

 ある悪しき相対主義者:「ニセ科学は、まともな科学と相対的に同じです」
 「相対的には、ニセ科学を批判する行為は、まともな科学を批判する行為と同じです」
 「ゆえにAさんは、ニセ科学を支持しているブロガーであるという結論になります」
 「以上で、絶対的な傍観者の立ち位置を堅持する私からの、『結局、悪しき相対主義が一番すごいんだよね』という演説を終えます」

 このような意見を毎日のように聞かされたAさんは、限界を超えるストレスを感じて倒れました。

 『教訓:この話は、いままでの芸風を事前の準備も無く急に他の芸風に変えると多大な無理が生じるということを教えています』

ネタのお言葉『故きdisを訪ねて、新しきdisを知る。もってdisの師と為るべし』

 この言葉は、あの「故きを温ねて新しきを知る、以て師と為るべし」の罵倒芸版である。
 【意訳】
 あなたが罵倒芸の初心者ならば、いきなり他所のdisり合いに参加しても良いですが、すこし待ってください。

 まずは、ネット上に数多あるdisの過去ログを探して、片っ端から閲覧してください。
 それが終わったら、日々新しく誕生しているdisのログ群を、片っ端から閲覧してください。

 この二つの作業が終わったとき、あなたは既存の罵倒芸の論者たちからも師匠と言われるような、
 余裕あるベテランのdisを披露できるようになっています。
 【意訳、終わり】
 このように孔子は言っていた。