創作小話『そんな小さなニセ科学を批判して悦に入っている段階ではないと述べて一人勝ちした者』

 ある村の広場で、ニセ科学に関する公開の討論会が行われていました。
 最初にAさんが主張しました。
 「EM菌の理論についてですが、科学的に摩訶不思議な話がいくつも含まれています。『すごい、万能の効果だ!』と飛びついたり、支持を表明したりするのは考えものです。懐疑的に受けとめたほうが無難ですね」

 次にBさんが主張しました。
 「化学物質過敏症についてですが、提唱されてから何年も『確かな証拠は見つからず』という状態です。『検証実験の仕方が悪いだけ、別の方法で検証すれば必ず証拠が見つかる』という人の話は、一歩引いて聞いたほうがよさそうですね」

 三人目にCさんが主張しました。
 「罵倒芸イオン実在説は、内容もダメすぎですが、」
 『まだ見つかっていないだけ、この宇宙空間を隅々まで探した暁に見つかる、しかし科学者たちは一向に探そうとしない、実に怠慢な連中だ』
 「という提唱者の言い訳も、ダメすぎです。他人に自分の主張の根拠を探させようとしている時点で、失格ですね」

 最後にDさんが言いました。
 「そんな小さなニセ科学を批判して悦に入っている段階ではない」

 「現代科学文明社会の日本において、いまだにニセ科学を鵜呑みに信じるこの村の、理科教育の失敗をしっかりと認識し、村政のあり方を一から検討すべき段階である」
 「そうしなければ、『ポケモンのジラーチが眠っている時間』が経っても事態が変わらないのである」
 「なお、ジラーチが眠っている時間は約1000年と言われている」

 これを聞いた他の論者たちは、「ふむふむ……えっ?」となりました。
 場の空気の異変を察知した司会者が、Dさんに注意しました。
 「御説ごもっともですが、その話は別の機会にしてくださるよう、お願いいたします」

 Dさんは反論しました。
 「そのような注意を述べて悦に入っている段階ではない」
 「この討論会の失敗をしっかりと認識し、村政のあり方を一から検討すべき段階である」
 「そうしなければ、太陽系が銀河系を一周するほどの時間が経っても事態が変わらないのである」
 「なお、太陽系が銀河系内の軌道を一周する時間は、約2億5千万年と考えられている」

 これを聞いた司会者は、「うん……えっ?」となりました。聴衆も、「ほう……えっ?」となりました。

 それ見たDさんは、勝利宣言しました。
 「みんな黙ってしまった、私の言っていることが的を射ており、反論する余地が一つもないからだ」
 「私と同じレベルでニセ科学問題を語る村人が現れるのは、いつの日だろうか? いや、そんな日は永遠に来ない」
 「切れ者はつらい、いつも孤独な立場に置かれてしまう」

 言い終えたDさんは、やれやれという表情で会場を去りました。

 以上、「そんな小さなニセ科学を批判して悦に入っている段階ではないと述べて一人勝ちした者」というお話でした。

 【教訓】この話は、個別のニセ科学を取り上げて議論している場所で、「そんな小さなニセ科学を批判して悦に入っている段階ではない、もっと大枠の形でニセ科学を語る段階だ、そうしないとニセ科学問題はいつまで経っても解決しない」と言ってあげると、他の人たちが一斉に引いてしまうという現実を明らかにしています。

 (この記事は、次のはてなブックマークを読んだ後で作りました)
 segawashinさんのコメント
 まあでももうこんな小粒なペテンを叩いて喜んでる段階じゃないのでは。
 「多年にわたる失政による大気汚染」とはっきり認識して政治的に詰めていかなきゃ100年たっても花粉症対策なんかできない。

 【追記】細かい話をしている論者を見かけたときは、「そういう段階ではない、今は大枠の形で話をするべき段階だ」と言ってあげる。
 大枠の形で話をしている論者を見かけたときは、「細かい部分も語るべきだ、今のあなたは『森を見て木を見ず』の状態だ」と言ってあげる。
 この行動を繰り返すことにより、自分一人の勝ちが次々と積み重なる。

 「煙たい人という評判が立ってしまうのでは?」と思われた御方は、この芸に不向きな人である。採用を断念しよう。