創作小話『マジギレ芸でニセ科学批判を行ったブロガー』

 泡沫過疎ツイッタラーのAさんが、雑な罵倒芸を披露した論者に対するマジギレの書評をこしらえていると、空飛ぶスパゲッティ・モンスターが現れて言いました。
 「お前のマジギレ芸は、怒りの中にもしっかりした論理構成がある」
 「雑な罵倒芸に向かって行使するのみの現状は、惜しい」
 「ゆえに、ニセ科学批判ブログを与える」
 「よく運営に励み、ニセ科学の問題を多くの地球人に伝えよ」

 Aさんは、すぐに承知しようとして思いとどまり、マジギレした上で受け入れました。
 空飛ぶスパゲッティ・モンスターは、「その答え方が正解である」と言って去りました。

 ニセ科学批判ブログに移ったAさんは、雑なニセ科学説を唱える論者たちに片っ端でマジギレしました。
 Aさんの評判はネット上の隅々に広がり、まもなく世界規模のニセ科学批判ブロガーとなりました。

 多くの読者から、称えるコメントが送られてきました。
 マスコミ各社から、インタビューの依頼が届きました。
 漫画化や小説化の話が来ました。
 アニメ化や映画化の話も来ました。
 歌舞伎化やミュージカル化、オペラ化やプロジェクションマッピング化、VR化や飛び出す絵本化、ラジオドラマ化や大理石へレリーフする化の誘いまで来ました。

 対応に追われたAさんは、ブログ上で披露するマジギレ芸が、徐々に雑な内容となり始めました。
 「少しくらいは手を抜いても良い」
 「なにしろ私は、世界で一番に忙しいニセ科学批判者である」

 そのように思った直後、Aさんはニセ科学と無関係なBさんに対するマジギレの記事を、うっかり書いてしまいました。
 
 忙しさのあまり、Bさんのウェブサイトにある自己紹介文を急いで読んだAさんは、
 『ニセ科学のワードを綴っています
 と認識して直ちにマジギレを行ったのですが、実際は、
 『デゼニワールドを語っています
 という自己紹介文であり、マジギレする必然性が一つもなかったのです。

 Bさんから指摘されたAさんは、詫びて記事を削除した後、自分の雑さにマジギレしました。
 「なんたる見間違いをしでかしたのか!」
 「世界で一番に雑なニセ科学批判ではないか!」
 「このようなざまの私が活動を続けて良いわけはない!」
 「今すぐに引退するべきだ!」

 Aさんは、ネット上から消えました。

 4848万1090年の時が経った頃、空飛ぶスパゲッティ・モンスターが言いました。
 「4848万1090、しはちしはちまんじゅうきゅうれい、しはしはまじゅきゅれ、ゆえに、しばしばまじぎれ」
 「マジギレといえば、あの時の地球人はどのような成果を残しているであろうか」

 その後、事の次第を知った空飛ぶスパゲッティ・モンスターは、Aさんのブログ跡に文字入りのモノリスを建ててあげました。

 《雑な罵倒芸にマジギレし》
 《雑なニセ科学にマジギレし》
 《雑なニセ科学批判の己にマジギレたA氏》
 《当人のマジギレは止まって久しくも》
 《過去ログに刻みしマジギレの数々は》
 《後生のROMたちに今も語り継がれる》

 【教訓】この話は、ブログの人気が上がり始めた時こそ気持ちを引き締めるべきであり、そうしない場合は思いもしない失敗をしでかして人気が止まるという現実を明らかにしています。

「もしもアニメ『ポケットモンスター』の登場人物であるゴウさんが、インターネットを閲覧していた際に、それまでの人生で見たことのない芸を実行している論者の姿を目撃したら」と考えました

ゴウ:「おや? あの論者の再反論の仕方、どこかおかしいぞ?」

ゴウ:「みんなからのツッコミに対して、真正面から答えていないぞ?」

ゴウ:「気になるから図鑑で調べてみよう、スキャンボタンをポチっ」

スマホロトム:「論点のすり変えぇ!

スマホロトム:「議論の流れが自説にとって不利になるとぉ、別の話をひたすら語りぃ、議論をうやむやで終わらせるぅ!」

ゴウ:「なるほど、論点のすり替えという技か」

ゴウ:「いつの日にかミュウをゲットするという俺の夢に役立つか否かはともかく、」

ゴウ:「サトシとディベートを行う際には、重要な奥の手となるかもしれない」

ゴウ:「一応は思考にインプットしておこう、それっ」

スマホロトム:「ナーイス! ゴウの芸風に論点のすり替えが追加されますぅ!」

ゴウ:「どうだラビフット、俺の芸の幅が拡くなったぞ」

ラビフット:「……」

ゴウ:「リアクション無し? クールハートか? ヒバニーの時の陽気は、どこへ行ったんだ?」

サトシ:「おいおいゴウ! 俺たちが住むこの世界にはな、進化すると性格が変わるポケモンも居るんだぜ!」

ゴウ:「ふうん、それは知らなかった、ありがとう……って、サトシ居たのか」

サトシ:「ああ居たさ! ゴウが論点のなんちゃらを思考にイノセントした時からな!」

ゴウ:「そうなのか? じゃあ、ディベートするか?」

サトシ:「だが断る!……言い間違えた、ディベートする!」

ナレーター:「こうしてサトシとゴウは、インターネットの閲覧を中止してディベートを始めました」

ゴウ:「だから『思考にイノセント』じゃないって、『思考にインプット』だって」
サトシ:「えっ、君は千パーセント?」
ゴウ:「それはオメガトライブだって」
サトシ:「えっ、オロチのライトが眩しい?」
ゴウ:「それはモンスター銀河だって」
サトシ:「えっ、モエタランガ?」
ゴウ:「……。ちがうっつーの!」

ナレーター:「次第に意地の張り合いとなり、双方とも『お前にだけは負けたくないっ』となり、ついには非難合戦となりました」

ゴウ「なんだよ、その直感ありきの論は!」
サトシ「そっちこそ、客観的なデータで攻めてくるって、ずるいぞ!」

サクラギ博士:「おーい、サトシ君とゴウ君、調査して欲しいことがあるからガラル地方まで行ってきてもらえないか……」

サクラギ博士:「って、すごい雰囲気だな、自己主張の練習かい?」

サクラギ博士:「自分の考えをちゃんと言える若者たち、感心、感心」

サクラキ博士:「ゆえに今日の出張は免除してあげよう」
(おわり)
コハル:「……あたしの出番は?」
ワンパチ:「……ぼくのでばんは?」
ピカチュウ:「よかった、ぼくはかんぜんオフのひだった」