創作小話『ニセ科学の亡霊を封じ込めた魔法の箱』

 ある村に、悪さばかりするニセ科学の亡霊が居ました。
 困り果てた村人たちは、天に居る「空飛ぶスパゲッティ・モンスター」に向かって祈りました。
 「どうか、ニセ科学の亡霊を懲らしめる賢者さまが、都合よく現れますように」

 すると、旅の途中の賢者が都合よく現れました。
 その賢者は、ニセ科学の亡霊と戦って見事に倒しました。

 賢者は、魔法の箱にニセ科学の亡霊を封じ込め、村外れの花畑に赴いて地下深くに埋めました。
 村人たちは、訪れた平和を喜びました。

 一段落した賢者は、パートタイムで働いた報酬を村人たちから受け取り、速やかに去りました。
 やがて、賢者の活躍は村の伝説となりました。

 それから、数千年が過ぎました。
 あるトレジャー・ハンターが、叫びました。
 「ひゃっほう! ついに宝箱を探り当てたぜ! 伝説は事実だったぜ!」
 「中身はどのような品かな? さっそく蓋を開けてみよう! わくわく」

 【教訓】この話は、ある怪しい説がネット上に拡散し、事態を憂慮したニセ科学批判者たちが対抗言論の記事を書き、それを見た人々が、
 「あたくしたちが信じていた説は、序論と本論と結論がダメらしいですわよ」

 「まじっすか、ありな説と思って『いいね!』のボタンを8万6千4百回ほど押したけれど、無しな行為だったすか」

 「あの説を心の中で密かに訝しんでいた我輩のレベルに今になって追いついたニセ科学批判者たちよ、諸君が対抗言論を公開するタイミングは遅きに失したが、ともかく大儀である、これより我輩はあの説に関する肯定的な評論を辞して沈黙のROMに戻るとする」

 「YO! YO! 夢中で信じた俺が居るYO! この心理をYouTubeで概要するYO!」

 「朝に甘露と受け入れたニセ科学説、夕にデバンカーの熱演を聞いて蒸散す」

 「科学リテラシー、これがあると、いいらしい」

 「もう飽きた、次の話題に、移行する」

 と述べて忘れ去ったとしても、しばし時が経てば、
 「こんな説を思いついて記事に書きました、いかがな読後感ですか」
 と述べるブロガーが現れて、
 「よく分からないけれど、科学的に妥当な説と思う」
 というツイッタラーが現れてフォロワーに紹介し、
 間もなくインフルエンサーの観測範囲にまで拡散し、ついにはツイッターのトレンドの上位が、

 「あのブロガーが提唱した説は斬新だ」
 「ゆえに、誤りは一つも含まれていない説という理屈になる」
 「新しさに訴える論証ではない」
 「というわけで、みんなも支持を表明しよう」
 「時代遅れの自分をさらけ出さないためにも」

 という趣旨のツイート群で占められ、その画面を見たニセ科学批判者たちは、
 「またですか……。またしてもあの説が社会に蔓延ですか! デジャブですか! もしくは私が過去にタイムスリップしたのかしら?」
 と述べながら対抗言論に取り組むという現実を明らかにしています。