創作小話『ニセ科学的な像を売ろうとした者』

 ある村に、流れの詐欺師が自分で作った『ニセ科学的な像』を携えてやってきました。
 詐欺師は村の広場で『ニセ科学的な像』を売り始めましたが、村人たちは見向きもしませんでした。

 というのも、その村には前日に流れのニセ科学批判者がやってきて、「科学的な思考がどうの、懐疑主義がこうの」と演説をぶっていたために、
 「そんな思考方法もあったのか」と村人たちは夢中で聞き入れ、演説が終わる頃には高い科学リテラシーを身に着けていたのでした。

 それを知らない詐欺師は、懸命に売り文句を叫びました。
 「このニセ科学的な像は、万能効果がありますよ! 持っているだけで、信じられない効果が出ますよ!」

 それを聞いた村人の一人が、指摘しました。
 「それほどすごい効果があるのなら、そのままご自身で所持していたら良いのですわ。他人に売りつけている場合ではないのですわ」

 詐欺師は粘りました。
 「いや、私は効果を十分に堪能して幸せな気持ちになりました、この幸せをおすそわけしたくて…」
 村人は、詐欺師を哀れみました。
 「かわいそうな人。他人だけでなく、自らも欺いて一生を終えるのね」

 それを聞いた詐欺師は、失望しました。
 「この村では万能を謳っても食いつく者が居ない、これ以上の長居は費用対効果が悪い、別の村に移動だ」

 【教訓】この話は、科学リテラシーの高い人に万能効果が謳われた品を見せても、事細かく吟味された末に購入されないという現実を明らかにしています。
 これをニセ科学推進者の大半が承知しており、万能効果を鵜呑みで信じてくれそうな人々に絞って売り込みを仕掛けます。

 また、古株のニセ科学批判者たちの多くが、「科学的な思考を軽視するニセ科学推進者と対話しても相互理解は無理、懐疑主義を知らずニセ科学を絶対に正しいと信じている人と対話しても説得は困難、ゆえに半信半疑くらいの人に語りかけよう、それがリソースを効率よく使用するニセ科学批判活動だ」というスタンスを採用しているのも、こうした事情があるゆえなのです。