ナレーター:「その日のサトシさんは、ベベノムとロトム図鑑を連れて、市場へ買い物に出かけていました」
サトシ:「買うべきものは、愚問の実と、煽りの実と、痛罵の実と」
ロトム図鑑:「違うロト、『モモンのみ』『ヒメリのみ』『チイラのみ』ロト」
ベベノム:「べー?」
ナレーター:「ベベノムが、絵を描いている女性を発見しました」
サトシ:「絵を描いているおねえさん、こんにちは! じゃなかった、アローラ!」
マツリカ:「お、おう……アローラ、アローラ」
サトシ:「disりながら絵を描いていたんですか?」
マツリカ:「いや、disりながら絵を描く趣味は、ない」
サトシ:「おねえさんの頭に乗っているポケモンの名前は、アクジキングですか?」
マツリカ:「いや、アブリボン。パートナーなんだ」
サトシ:「へえ、どんな能力を持っているポケモンなの?」
ロトム図鑑:「僕が答えるロト。アブリボンは、人間の内なる心を読み取れるロト」
サトシ:「そうなんだ、じゃあアブリボン、俺の内なる心を読んでみて」
アブリボン:「ぼぼぼぼ、ぼーん」
マツリカ「お、おう……」
サトシ:「なんです?」
マツリカ:「なにも読み取れない、なにも考えていない頭……とアブリボンは言ってる」
サトシ:「なにも考えていない頭? つまり、無の境地を悟っているんだな、俺ってすげー」
ロトム図鑑:「違うロト、サトシはアブリボンからdisられたんだロト、名前をアクジキングに間違えられた仕返しロト」
サトシ:「それはそれですごいじゃん、アブリボン、もっとdisを披露してよ」
アブリボン:「ぼん、ぼーん」
マツリカ:「これ以上はダメ、絵ができた後ならいい……と言ってる」
サトシ:「わかりました、絵ができるまで待ちます」
ラップ:「キュートなアブリボン、発見!」
ナレーター:「スカル団の下っ端が現れました」
ラップ:「兄貴ぃ、あのアブリボン、あたい欲しいぃ」
タッパ:「ああ? やめとけ、あんな弱そうなポケモン」
ジップ:「そのとおりっスカ、戦力の足しにもならないっスカ」
アブリボン:「ぼぼぼぼ、ぼーん」
マツリカ:「戦力の足しにならないのは、あなた達のほう……とアブリボンは言ってる」
ラップ:「え?」
アブリボン:「ぼぼぼぼ、ぼーん」
マツリカ:「あなた達は、カキのZ技に負けた過去がある、イリマのZ技に負けた過去がある……と言ってる」
ジップ:「なんで知ってるんスカ?」
アブリボン:「ぼぼぼぼ、ぼーん」
マツリカ:「ロケット団の下っ端、ムサシ、コジロウ、ニャースとZクリスタルの争奪戦をしたとき、あなた達は負けている……と言ってる」
ジップ:「だから、なんで知ってるんスカ、初対面のはずっスカ」
アブリボン:「ぼぼぼぼ、ぼーん」
マツリカ:「いきがるわりに勝率はゼロ、今日も、いきがった時点で、あなた達に負けフラグが立つ……とアブリボンは言ってる」
タッパ:「なにい? ほ、ほう、事実を淡々と言いながらも、痛いところをしっかり突いてくるとは、なかなかできるアブリボンだぜ」
ジップ:「兄貴、感心している場合じゃないっスカ」
ラップ:「言われっぱなしで悔しいぃっ」
タッパ:「ようし、俺達の本当の実力を見せてやろうぜ、ヤトウモリ、どくどく!」
ジップ:「ダストダス、ベノムショック!」
ラップ:「ズバット、エアカッター!」
サトシ:「おい、三対一のポケモンバトルは卑怯だぞ!」
ベベノム:「べべべべ!」
タッパ、ラップ、ジップ:「痛たたっ、うわあー」
ナレーター:「スカル団の下っ端たちは、ベベノムの技を受けて吹っ飛んで、退場しました」
ロトム図鑑「今の技は、みだれづきロト」
サトシ:「さみだれ式の気づき? 初めて聞く技だ」
ベベノム:「べーベ♪」
ナレーター:「このような経緯でベベノムは『みだれづき』を覚えたのでした」